おぷせるう゛ぁとわーるふきん
オプセルヴァトワール附近
Around the Observatoire
1927(昭和2)年
油彩、キャンバス
oil on canvas
玉井一郎氏寄贈
高い場所からパリの街のながめを描いた作品です。灰色にくもった空の下、左から右に向かって遠ざかる建物が並び、中ほどには葉を落としたマロニエの並木が、枝を広げています。画面の下では、右から走るサン・ミッシェル大通りが、モンパルナス大通りと鋭角的に交差し、行き交う車や人々が、すばやい筆で描きだされています。題名の「オプセルヴァトワール」とは、パリ天文台のこと。この作品は、その天文台の400メートルほど北にある、ホテル・ボーヴォワール6階52号室から、西に見える風景を描いています。当時その部屋に住んでいたのは、バイオリンを学びに渡欧していた林龍作でした。彼は、佐伯やその他の画家たちと親しく交わり、彼らに音楽の面で大きな影響を与えた人物です。その部屋からの眺めが気に入った佐伯は、林に頼んで部屋の一画を借り、この作品を描いたのでした。画題を街の景色に求めて写生に行くのが常であった佐伯の作品は、ほとんどが20号(約60×70センチ)ですが、それに対してこの作品は30号(73×92センチ)と大きめです。知人の部屋という落ち着いた環境で、気に入った景色にじっくり取り組もうとする、佐伯の意気込みがうかがえます。黒一色で描かれた木々は、寒々とした印象を与えますが、ここには墨による表現を取り入れようとする、佐伯の姿勢を認めることができます。